文化書房博文社 創立40周年記念刊行
社会学調査研究全書
(全20巻)
1998年12月より刊行開始
われわれは,ここに,「社会学調査研究全書」(全20巻)を刊行し,社会学界はもとより,広く社会科学全体の研究の発展に資したいと考えている。社会学は,西欧社会において近代社会への移行とともに,社会的・歴史的役割を担って成立して以来,その前史を加えれば,優に200年以上の歳月を経ている。若く,新しい学問とよばれた社会学も,すでに長い年輪を経てきた。この間,すぐれた社会学的研究業績が,少なからず世に問われ,社会科学の多くの分野や,学界以外でも高い評価をうけ,さまざまの形で社会的に貢献している。その一部は,すでに,「現代社会学体系」(全15巻 青木書店刊)として訳出されるなど,社会学のみならず多方面で活用されている。その「現代社会学体系」が,おもに社会学理論の集成であるのに対して,社会学的研究のいま一つの重要な領域である,経験的,実証研究,調査研究のすぐれた業績を,国の内外にわたって,ひろく全世界的に選び出し,集成したのが,本「社会学調査研究全書」(全20巻)である。この両企画の完成によって,社会学的研究の全貌が明らかになり,総合的に理解されることになる。
ところで,きわめて大づかみにとらえると,社会学における調査,実証研究は,全世界的にほぼ共通して,各国の各社会で第一の時期として,1880年〜1900年頃,第二の時期として,1930年代をピークとする時期,そして第三の時期は,1945年以降であり,この段階で社会学における調査,実証,経験的研究は全般化した。いま,世界史の新しい転換の中で,第四の節へと曲がり角をまがり,新しい展開がのぞまれる状況に入っている。そこで,本企画では,社会学的実証・調査研究の本格的展開,そして社会学的研究の転換期,すぐれた調査研究が続出した時期であった1930年代を重点的かつ中心として,この時期を軸に前後に約半紀にひろげて,すぐれた諸研究,業績を選定,訳出,紹介することとした。重要な條件として,翻訳上の諸制約をも考慮し,さらに社会学のこれまでの展開に基づいて,まずこの原則にもとづいて精査,選定した。
その上で,われわれ企画委員は,次の3,4の基準に基づいて,本全集への収録の文献,資料を決定した。これ以外の選択基準もありうると考えるが,真剣に討議をかさね訳出すべき業績として,それらを選びその訳者,解説者を決定した。
その基準の第一は,これまでの社会学における実証・調査研究のなかで,その研究内容が,現代の社会学的研究に連続しており,今後の研究に稗益することの大きい業績,文献,つまり現代性をもち,これから第四期の新しい社会学の発展に役立つと認められるものを選んだ。その研究が対象としたテーマそのもの,および,当時の社会の分析としてすぐれたものであり,新しい知見を現代の社会学者にあたえる。またその切り口,問題意識などの点で,現代からみて高く評価されることなどが含まれていると判断できるものである。それを新しい視角でほりおこすことが有益であるとみとめられるものに限った。
第二の基準は,その業績・研究が,研究の技術上の問題もふくめて,方法(論)的に,今日でも有効であり,今後の研究に大いに参考となるものであるもの。そして,第三には,これまで,著名な研究でありながら,手にとることのできなかった文献,業績で,第一,第二の基準をかねそなえているもの−それはいわば古典ともいえるものでもあるが,それらをさきの時期にとらわれず,かなり溯っても,ひろく選定し,訳出した。
第四には,この基準を,わが国の研究にも適用し,すぐれた先行研究を発掘,選び出し,わが国の社会学史上の正しい評価と今後の後進の研究者に資することを考えて選んだ。
以上により,決定された諸業績が,この20巻にふくまれている。本企画は,必ずしも十分なものとはいえず,重要な仕事の選定もれといったこともあろうかと思う。しかし,こうして選ばれた貴重な文献,業績の集成が,社会学を学ぶ学生,大学院生のみならず,専門研究者,他分野の方々,さらにひろい読者を得て,さまざまの形で活用されることを,本企画に参加したすべての者が願っている。なお,そのために,各巻の巻末に,精選された訳者・解説者のできるかぎり質のたかい解説を付すことにした。それをふくめて本全書は活用されるところ大なるものであって,研究,学習上の指針となると確信し,刊行の辞とする。
A5判・平均260頁・定価4,620円(税込)前後
「社会学調査研究全書」企画委員
北川隆吉(代表)・藤田弘夫(幹事)・板倉達文・稲上 毅・小井土彰宏・佐藤博樹・友枝敏雄・藤井 勝
1 | 産業民主主義 | 近刊 |
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S.J.&B.P.ウェッブ/訳者 佐藤博樹・鈴木不二・熊沢透/解説 佐藤博樹 | ||
2 | 計量社会学の誕生 | 刊行済 |
A.L.ボウリー/訳者 友枝敏雄・平野聖子・土井文博/解説 友枝敏雄 | ||
3 | 都市と労働者の生活 | 近刊 |
F.ツバイク&B.S.ロウントリー他/訳者 尾上正人・和田清美他/解説 北川隆吉 | ||
4 | ヨーロッパの労働者家族──社会的方法 | 近刊 |
P.G.F.ルプレー/訳者・解説 後藤澄江 | ||
5 | 階級構成と社会運動 | 近刊 |
M.アルバックス/訳者・解説 板倉達文他 | ||
6 | 東エルベ・ドイツの農業労働者の状態 | 近刊 |
M.ウェーバー/訳者・解説 稲上毅・矢野善郎 | ||
7 | ホワイトカラーの誕生──新中間層の誕生 | 近刊 |
E.レーデラー/訳者・解説 嘉目克彦 | ||
8 | ヨーロッパとアメリカのポーランド農民 | 近刊 |
T.W.トマス&F.W.ズナニエッキ/訳者・解説 水野節夫 | ||
9 | ホームレス・メン | 近刊 |
E.H.サザーランド&H.J.ロック/訳者・解説 吉瀬雄一 | ||
10 | 社会移動 | 近刊 |
P.A.ソローキン/訳者 白倉幸男・片岡栄美/解説 直井優・白倉幸男・片岡栄美 | ||
11 | 災害における人と社会 | 刊行済 |
P.A.ソローキン/訳者 大矢根淳/解説 藤田弘夫・大矢根淳 |
||
12 | ディープ・サウス | 近刊 |
W.A.ディヴィス他/訳者 稲月正・三隅一人/解説 小井土彰宏・稲月正・三隅一人 |
||
13 | TVAとグラス・ルーツ | 近刊 |
P.セルズニク/訳者 鵜飼孝造/解説 小井土彰宏・鵜飼孝造 | ||
14 | アメリカの兵士 | 近刊 |
S.F.スタッファ/訳者 米田公則・山崎仁朗/解説 佐藤博樹・米田公則 | ||
15 | 中国の家庭・郷村・階級 | 刊行済 |
李景漢・喬啓明・毛沢東/編・解説 佐々木衞/訳 南裕子 | ||
16 | タイ農村経済調査 | 近刊 |
C.C.ツィンマーマン/訳者 高井康弘・関恭子/解説 北原淳 | ||
17 | 日本人の外国研究論文集──韓国・台湾 | 近刊 |
秋葉隆・馬渕東一/校訂・解説 和田清美・渥美剛 | ||
18 | 日本農村調査集 | 近刊 |
有賀喜左衛門・喜多野清一・井森陸平/校訂 藤井勝・小林和美/解説 藤井勝 |
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19 | 労働者調査論文集 | 近刊 |
尾高邦雄・松島静雄他/校訂・解説 柴田弘捷・佐藤厚・中村良二 | ||
20 | 生活文化調査論文集 | 近刊 |
権田保之助・奥井復太郎・他/校訂・解説 間々田孝夫・堀川三郎 |
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